「妖艶」たるは、人(じん)あればこそ……



誇り高き妖かしの血の気高さ故、愛し愛することを許されず……
肉親の‘情愛’にすら包まれることもなく育った美しき妖かし。


その美しき母が産んだ腹違いの義弟に
‘慈愛’と呼ぶには寂しすぎる想いを感じたまま、
現在(いま)に至る……





「ぶざまだな……
 その姿、貴様の母によく似ている。
 愚かな……人間の……
 私は幼い頃、貴様の母が目障りであった。
 なのに、何故、父上は……」





 行灯の揺蕩(たゆたひ)に映し出される幻影は、義母を突く父上の姿。
「は、ぁぁ・・・あなた・・・」
「、十六夜・・・」
 融け交わる二人の影絵を見る幼き兄の瞼に浮かぶは、
 美しき義弟の母の妖艶に乱れる姿。
 そう、この目の前にいる彼女と同じ黒髪の美しき義弟の……




「ビシッ、ビシッ」
 兄の毒爪が抵抗する妖力をもたない黒髪の少年を翻弄する。
「やべぇ……こいつ、なにを?」
 兄のただならぬ気配が理解できず、ただ身を硬くして攻撃を受けるしか術がなかった。
 


「この殺生丸を愛そうとしたお前の母に、
 父上が愛したお前の母に、
 その黒い瞳に、
 今宵、制裁を加える……」



 刹那、唇を捕らえられた。
「え?」
 感じたことのない兄の感覚に犬夜叉の脳裏から理性という感覚が吸い取られていくようだった。

「てめぇ、なにしやがる?」

「なにをだと?父上がそなたの母にしたと同じ罰を貴様に与える。」

 いったん捕らえた唇の感覚は決して犬夜叉を解放することなく、その首筋から胸元、そして全身に降りていく……
 次第に熱くなる犬夜叉の身体は、かごめに感じたときとはまた異なる快感。
 全身の力が抜ける。
‘何か’を欲している自分を否定できないまま
「くぅ……や、めろ。」
振り絞るような声で犬夜叉が抵抗した。

 既に指貫を剥され、その毒爪が袴にかかろうとしたとき、兄が犬夜叉のものを掴んだ。 

「やめろ、だと?
 本当にやめてもよいのか?
 ここはこんなに素直だというのに……」

 はちきれんばかりに袴を持ち上げる犬夜叉のものを扱く兄の指が器用に袴の紐を解いた。
 露わになったものは天を仰ぎ、先走りの光すら見える。

「どうだ、これがよいのであろう?」

 さらに扱きあげる兄の情に次第に息遣いを荒くする。




「よいな、犬夜叉!
 これが、お前の兄だ。」

 美しき兄弟は一糸まとわぬ露わな姿を互いに晒し、犬夜叉は図り知ることのできない深い兄の情を痛みとして受け止め、その身に刻まれることとなる……



 銀色の髪、

   漆黒の髪、

     艶やかに絡み合うは

       幽玄たる交わり……




 嫌悪感などではない。
 幼子のころより、むしろ強くて美しい兄に抱いていた羨望ともいえぬ少年の憧憬……







「妖艶」たるは、人(じん)あればこそ……








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